さて、みんなは人と出会った時、「この人合わないなあ」と感じたら、どんな対応を取っているだろうか。今日はマッチングアプリの問題点を取り上げるシリーズの第4回目で、“ブロック”という行為を検証する。
ほとんどのマッチングアプリには、自分がやり取りしたくない相手の表示やメッセージを遮断するブロック機能が付いている。これは一見便利なものだが、良い恋愛や結婚に辿り着き、人徳を磨いて良好な人間関係を構築するという面で考えるとデメリットも多い。
本題に入る前に、いくつか前提を述べておこう。
まず、どんな人間関係でも、相性というものは必ずある。誰とでも仲良くなれるわけではない。その上で、ブロックという行為自体は、他の手段でもいくつか存在する。SNS(ツイッターやインスタグラム等)、ネット上のコミュニティサイト、LINE、電話(着信拒否)などだ。
特定の相手とのコミュニケーションを遮断するということは、必要な場合も多数ある。不要な広告宣伝や詐欺等の迷惑メールや迷惑電話を遮断することは生活上必要なことであるし、SNSなどであからさまな誹謗中傷をしてくる相手もブロックすることが必要な場合も多々ある。普段の人間関係でも、気の合わない相手とは距離を置くということは、誰もがやっていることである。
つまり、人間の生活上、特定の人間関係から離れ、関係性を遮断するということは必要な行為である。ただし、恋愛や結婚を目的としてマッチングアプリで活動をする場合、ブロックという行為がデメリットになるという話を、今回の記事では掘り下げていく。
まず、マッチングアプリを使う前に、知っておかねばならない。
人と向き合い、相手と良い関係を築くには、それなりの時間がかかるのだ。コミュニケーションを交わしていく中でエネルギーも要する。これは普段のリアルな人間関係で誰もが知っていることだろう。
これに対し、マッチングアプリという場はあまりにも特殊だ。対象となる異性の人数が多すぎるからだ。たいていのマッチングアプリは、何千何万人という登録者がおり、検索・スワイプすればいくらでも異性が出てくるのだ。
この状況は、人間にとってやっかいな心理状態を引き起こす。
『私はこのたくさんの異性の中から、好きな人を選ぶことができる』
『うまくいかなくても、代わりはいくらでもいる』
『気に入らない人はブロックすればいい』
こういう思考に陥ってマッチングアプリの沼にどっぷりと浸かっている人は、日本中に山ほどいる。恋人や夫婦という人間関係はより密度の濃い人間関係なので、本来はよりじっくり相手と向き合ってコミュニケーションを取らなければ良い関係を築くことなどできない。しかし、『代わりはいくらでもいる』『気に入らなければブロック』こういう状況に置かれれば、真剣さがなくなってしまうのは当然のことだ。こうして、些細なことで相手をブロックするという行動を簡単に引き起こすようになる。
さらに、こんな側面もある。
人間の脳は、オレ達が思っているほど丈夫ではないのだ。
“多数の異性がいる”というマッチングアプリだが、いわばこれは、“常に新しい出会い”が約束されているということだ。人間の脳は、常に新しい情報を欲しがるようにできている。新しい情報、新しい出会いがあると、脳からドーパミンが放出される。ドーパミンとは、「意欲」「運動」「快楽」に関係する神経伝達物質だ。こうして、マッチングアプリをやめられなくなっていくと同時に、脳が疲れていく。
マッチングアプリは情報の洪水であり、他のライバルとの競争だ。“情報の洪水”と“競争意識”。これは、脳が極度の疲労に陥る要因なのだ。
マッチングアプリで希望を胸に、新たな出会いを探し始めたはずなのに、いつの間にか頭の中は疲労困憊。さてここで、人間は何をしようとするだろうか?そう、『ブロック』である。不要な相手、不快な相手、どんな些細なことでも気に入らないと感じた相手、全てブロックしてしまえばいい・・・。
こうして、現代の便利なツールであるマッチングアプリは、薄っぺらい人間関係ばかり生み出す堕物と化しているのである。
ここで一つ、一例を紹介しよう。マッチングアプリでは、「そんなことでブロックするのか?」という信じられない事例が多数あるものだが、そのうちの一つである。
お相手からこんな返信が来た。
『いいですね京都!自分も京都大好きです。神社とかはあんまり興味ないのに伏見稲荷だけは凄い好きです』
この一言でブロックしちゃった。私が神社巡り好きなの知っててこの返しは個人的には嫌だ。こういう細かい一言が人より気になってしまうのが私の難。
<参照元:https://twitter.com/oMbNTZhrU8yzscP/status/1736321004530815088>
現代人は、自分の気分と感情だけで相手を切り捨てる便利なスイッチを、みんな手軽に持っている。傷つくこと、イヤなことは誰でも避けたいし、都合の悪いことからは逃げたいものだ。
しかし、そればかり繰り返したら人間はどうなるか?良い恋愛、良い結婚、良い人生が送れるか?
この回答は、すでに現状の人間社会で充分表れている。今のようなネット社会に発展した以上、異性との出会いがマッチングアプリのような形になるのは致し方ない。それでは、何に気をつけて、何を心がけて使えばよいのか。オレ達人間は、よく知恵を使って考える必要がある。
(作・イキルちえ)
こちらも合わせてどうぞ→<このブログの紹介>
その1はこちら→<マッチングアプリの問題点(序章)>
その2はこちら→<マッチングアプリの問題点(その2)>
その3はこちら→<マッチングアプリの問題点その3(パパ活女性の大量発生)>
その5はこちら→<マッチングアプリの問題点その5(ドタキャン)>