生きる知恵

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マッチングアプリの問題点その8(究極の優生思想に飲み込まれる恋愛・婚活難民)

 さて、みんなは「良いものが欲しい」という欲求がどれ位あるだろうか。今日の記事は、マッチングアプリの問題点を解説する内容の第8回目である。

 少し前置きを記載する。恋愛と結婚については、基本的に優れた人ほど有利に実現できるものであり、それが自然の掟であると考える基本の視座がある。しかし、人間は誰でも幸福になる権利があり、人権は誰にでも平等にあることが憲法でも明確にされている。今日の記事は、その“誰にでも必ずある人権”の幅広い視点から問題定義をする内容になっている。

 それと同時にこの記事は、ある意味お気楽に生きている人への“警告”という側面もある。

「恋人ほしいなー。結婚したいなー。そうだ、手頃なマッチングアプリをやろう」と考える人にとっての警告である。それを踏まえた上でお読みいただければ幸いだ。

 

 読者のみんなは、『優生思想』という言葉をご存じだろうか。この思想は、「優生学」に基づいた思想のことなのだが、優生学の意味とは以下になる。

 

―――人類の遺伝的素質を改善することを目的とし、悪質の遺伝形質を淘汰し、優良なものを保存することを研究する学問。〔広辞苑第5版、P,2712〕―――

 

 ごく簡単にいえば、「良いものを残し、悪いものは消していく」という思想である。

 人間の歴史は、この優生思想と非常に色濃い繫がりがある。近代化以前は、病弱な子どもや高齢者などは人権のカケラもなく処分されることは珍しくなかった。1930年代にかけては、ナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺が行われたのは有名かつ重い歴史である。

 日本にはかつて、「優生保護法」という法律があり、この法律の目的として「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」という記載があった。(優生保護法は1996年に母体保護法に改正されたが、優生保護法の時の思想は根強く残っている)この法律の元、人権を無視したような不妊手術や出生前診断が行われていた。

 そしてこの優生保護法は、1933年に制定されたナチスの遺伝病子孫予防法を元に作られた法律である。

 つまり・・・。

【誰でも「良いものが欲しい、悪いものは嫌だ」この感覚は変えようがない。広義な範囲でいえば、人間が生きるために、「良いものは残して悪いものは切り捨てたい」・・・しかしこれは、非人道的な考えで改めなければダメだ。だから、一人一人の人権を尊重した考えを持とう。

 これが数百年かけて、今現在人類が辿り着いている推奨の価値観である。

 

 勘の良い読者の方は、もう何かしら気付いているかもしれない。現在のマッチングアプリでは、どんな思想で何が行われているかを・・・。

 そう、あれはまさに優生思想そのもので、極端にいえば、“ナチスドイツがやった虐殺を容認しているのと同じ”なのである。

 マッチングアプリは、外見、住まい、収入、仕事内容、趣味、本人の考えなどがプロフィールとして掲載される。それを見た利用者は、「この人は良い、この人は悪い」と、自由に選別することができる。これは、ナチスドイツで行われたユダヤ人虐殺の収容所指揮官と同じ権限を持って行動しているのと同じである。

 さらに、自分自身が選別される立場であることも忘れてはいけない。

 マッチングアプリで活動していれば、ほとんどの人が「この人は良い、この人は悪い」という基準で選別され、断られる経験を重ねる。これが続くと、人はどんな心理に陥るのか?

 これは、本人の経験や性格により、主に二通りに分かれる。

 一つ目は、“「自分はダメなんだ」という自己否定”である。これは元々自分に自信がなかったり、異性との関わりの経験が少ないと、特にこのような心理状態に陥りやすい。

 二つ目は、“他者への怒りの増幅”である。元々自分に自信があり、異性との関わりが多かった人はこの傾向が出やすいが、そうでない人もこのような感情が出ることもよくある。

 

 読者のみんなは、世間の情報や街中の広告などで、こんなキーワードをよく目にすることがないだろうか。

「ありのままでいい」

「あなたは悪くない」

「自分らしく生きよう」

 これらの言葉は、人間の自己否定や怒りの感情を鎮めるために頻繁に使われる。

 これらの言葉が世の中に数多く出回り始めたのは、概ね平成の中期頃からだ。必ずしも恋愛や結婚だけに関連するキーワードではないのだが、いよいよ少子化が深刻化し、未婚率が急上昇し、出会い系サイトやマッチングアプリの初期型のものが出始めた時期と重なるのは、偶然とは言い切れないだろう。

 現代、恋愛や結婚がうまくいかずに苦しんでいる人があふれるほどにたくさんいる。その原因として、マッチングアプリの構造が引き起こす心理的作用は必ず知っておく必要がある。

 

 ここで関連する例を二つ紹介しよう。

 まず以下は、X(旧ツイッター)のとあるポストである。内容は非常に極端で攻撃的なのだが、「良いものがほしい、悪いものは嫌だ」という感情を元に、ユダヤ人虐殺の収容所指揮官と同じような権限を持っているといかに人間は暴走するのかということが証明できるような内容である。

<参照元:https://x.com/BMTennis/status/1841148391209992309>

〔男で身長170cmないやつマジでキモイ。どんな生活したらそんな低身長になるのか教えて欲しいし、低身長は男としてゴミすぎ。170弱なのに自信満々で170っていうやつもマジでキモイ。女にヒールはかせてやれない男に人権はない。胎児からやり直せクソザコ雑種がよ〕

 

 もう一つは、学習院大学の鈴木亘教授などが発表した論文のニュースである。理想の結婚相手とマッチングする割合が3.8%という低い数字であることを示したものだ。相手に対して条件を優先するとマッチング率は非常に低く、条件を緩和するとマッチング率は上がるという。

<参照元:「理想の結婚候補」とマッチング、3.8%の狭き門 学習院大教授ら論文(日本経済新聞WEB版)>

 

 それでは最後に、“「自分はダメなんだ」という自己否定の気持ち”と、“他者への怒りの増幅” を、どう対処すれば良いのかという点をまとめておこう。

 現代人は、“人から評価される”ということとは常に隣り合わせだ。まずはこの自覚を持つことが、最初の第一歩となる。そして、恋愛と結婚は、誰でも自由に求める権利がある。

 パートナーを探して活動する上では、最終的には、一人素敵な人と出会えればそれで良いわけだ。そこにたどり着くまでは、ほとんどの人が一筋縄ではいかないだろう。

「マッチングアプリってこういうものだし、ショックを受けることもあるだろうけど、一人素敵な人と出会えればいいんだから、気楽にやろう」という位の『基本構造は知った上で、気を張りすぎないでやる』ことが、一番の近道ではないだろうか。

 気を張りすぎていると、その雰囲気は、緊張感として必ず相手に伝わる。人は、安心して接することができる人に自然と魅かれるものである。

(作・イキルちえ)

こちらも合わせてどうぞ→<このブログの紹介>

その1はこちら→<マッチングアプリの問題点(序章)>

その2はこちら→<マッチングアプリの問題点その2(男女で利用目的が違い過ぎる)>

その3はこちら→<マッチングアプリの問題点その3(パパ活女性の大量発生)>

その4はこちら→<マッチングアプリの問題点その4(ブロックという行為)>

その5はこちら→<マッチングアプリの問題点その5(ドタキャン)>

その6はこちら→<マッチングアプリの問題点その6(パパ活女性が入ってくる仕組みの例)>

その7はこちら→<(公開されている情報やデータが少ない)公開すべき情報の一覧の例>

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<参考文献>

榎本博明著〔孤独を楽しめる人こそ、人生うまくいく!「自分を大切に生きる」コツ〕(三笠書房)

精神保健福祉ジャーナル 響き合う街で〔第100号〕《特集:精神保健福祉のボトルネック》(やどかり出版)