さて、みんなは周囲に「結婚したいのにできない」と困っている人はいるだろうか。現代は、結婚が非常に難しい。出会いの機会のなさ、お金の問題、婚活市場に行って婚活をするもうまくいかない事だらけなど、原因は様々だ。婚活中のお見合いや交際で思うようにいかず、すれ違い、文句を言う人も山ほどいる。そして、婚活しても結婚できず、結婚をあきらめる人が続出している。
なぜ、こうなるのか。
そもそも婚活とは、「結婚したい」という、同じ意志を持った人同士が出会う。この時点で、共通の方向性を持っているわけだ。それなのに婚活で苦労する人が続出し、結婚相談所の平均成婚率が10%にも満たないというのは、まだ見えない多くの原因が隠れていることが充分予測できる。
そこで一つ、大きく関連すると思われる資料をご紹介しよう。以下は、『スマホ育児が子どもを壊す』(石井光太著・新潮社)という書籍のP164~165から一部引用したものである。この箇所の内容としては、著者が現代の子ども達の特徴について、中学校の教員に話を聞いた際に返ってきた言葉の一部である。
先生(関西・40代男性)は話す。
「生徒たちの人間関係がタコツボ化して狭く偏っているのは事実です。私が心配なのは、その理由です。生徒たちに、なぜ他の子たちと付き合わないのかと尋ねると、『どうせわかってもらえないから』とか『無理して付き合ってもウザいと思われるだけ』と答える子が意外に多い。自分のことをわかってくれない人とは付き合うつもりはないと端から決めつけているのです」
一体なぜ、そう考えるのだろう。
「今の子ってわかってもらって当たり前という発想なんです。だから、自分を無条件で受け入れてくれる“わかってくれる人”とだけ付き合うといったスタンスが生まれる。
赤の他人同士がわかり合って親しくなるには、それなりのコミュニケーションが必要じゃないですか。いろんな誤解や失敗を重ねながら、だんだんとお互いを理解していくのが友達ですよね。
でも、今の子はそんなにコミュニケーション能力が高くないし、他人とぶつかる気力もない。自ら仲直りできるような器用さもありません。だから、無理をして誰かとかかわって失敗するくらいなら、初めからまったく接しない方がいいと考えるのです」
この書籍は2024年に刊行されたものなので、引用した教員の言葉を含め、記事中の取材エピソードのほとんどは2020年代前半である。
内容としては、子どもの教育現場に焦点を当てて考察しているのが主なので、現在大人で婚活をしている世代とは異なるのだが、引用した内容・課題は、今婚活をしている世代にも共通していることが充分考えられる。
「自分を無条件で受け入れてくれる、わかってくれる人」とだけ付き合う。
これは、現在婚活をしている世代(主に20~40代)でも、非常に強く見られる。基本的な物事の考え方、価値観、働き方、住む場所、家事分担など、何でも「いいよ」「それでいいよ」と何の抵抗も示さず、全て文句も言わず受け入れてくれる・・・そんな結婚相手を求めて彷徨っている人は、とてつもなく多い。
しかし、人間はそれぞれ個性、違いがあるものだ。お互いに違う所を知り、そこからコミュニケーションを図りながら仲を深めていくものだ。
ところが婚活をしている多くの人は、少しでも自分に合わないと感じると、「合わない!」とすぐにあきらめる。あるいは、「自分のことをわかってくれなかった!」と解釈し、憤慨する。
これは一体、どういうことだろう。大人のやっている婚活にしては、あまりにも幼稚で短絡的すぎる。
一つ、主要な傾向としては、以下のように分析できる。
婚活をしている多くの人にとって、『自分にとっての結婚相手は“これ”という明確なイメージ像があり、そこから少しでも外れると、対処の仕方が全く分からない状態』といえるのではないか。まさに、上記で引用した書籍で40代の先生が子どもたちを指して述べていた「自分を無条件で受け入れてくれる、わかってくれる人」とだけ付き合う経験ばかり重ねてきて、いざ大人になって婚活をして、少しでも自分のイメージ通りにいかないと対処できなくなっている現象である。
これらは、現代の情報化社会、教育の問題を中心として、非常に根深い。日本社会独特の排他的な雰囲気、同調圧力、失敗を責める(怖がる)風潮、SNSの弊害など、複数の要因が絡んでいる。
ここからは、「婚活をしている当事者」「婚活はしていない当事者ではない人」のそれぞれが、この問題をどう捉え、どうしたら良いかという視点で、この記事をまとめていこうと思う。
婚活をしている人は、初回のお見合いなどの早い段階で、以下のような言葉を相手に伝えることをアイデアの一つとして提言しておきたい。
『私達は初対面で、まだお互いのことは何もわからないですよね。価値観、考え方、育った環境など。お互いに、結婚相手のイメージがあると思いますが、最初から完璧にお互いのイメージぴったりに合うということはないと思うので、これから、お互いのイメージに合って理解し合えるように、私はこれから努力していきますね』
続いて、当事者ではない人、つまり婚活をしていない人はどうしたら良いだろうか。
この層の人達にとって、一見他人事のようにも感じるだろう。しかし、決してこれは他人事ではない。なぜなら、基本的に結婚する人がいて子どもが増えることで、社会が維持されるからだ。労働にて社会を担っている人々は、時間と共に若い世代に切り替わっていく。そして子どもは、親の考え方や行動から学んで大人になっていくのは言うまでもない。
これから将来を担う若い世代が、『わかってもらって当たり前』『自分を無条件で受け入れてくれる、わかってくれる人とだけ付き合う』こんな思考で、みんなが生きやすい社会を作っていけるだろうか?このブログの読者のみんなならわかるだろう。
婚活をしている人は世間全体の数%だが、当事者でない人は、婚活をしている人にはできる範囲で協力し、間違っていることに対しては正直に指摘する。こういうことが必要とされていくだろう。
(作・イキルちえ)
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<参考文献>
石井光太著『スマホ育児が子どもを壊す』(新潮社)