生きる知恵

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適切な性教育の内容とは

 さて、みんなは子どもの頃に適切な性教育を受けられただろうか。今の自分の性に関する生活は、受けた性教育が土台になって反映されているだろうか。

 おそらく今の大人の世代の大半は、適切な性教育を受けた経験がないと思う。今の教育プログラムの性教育はまだ遅れていて、試行錯誤の最中である。しかし性教育は、人間が生きていく上で最も大切な教育といっていいもので、いつまでも現実逃避して遅れているわけにはいかない。

 そこで今回は、性教育について大切な枠組みを、わかりやすく簡潔に記述する。子どもが大人に成長していく中で、現実を見据えて役に立つようまとめていく。つまり、異性等と良い関係を築き、恋愛や結婚なども含めて本人の幸福な生活につながる指針となることが目標だ。

※留意点

<1>何歳でどこまで理解できるかはかなり個人差が影響するので、そこまでの記述はこの記事では省略する。

<2>当記事では、教育を行う側を“教育者”と記載しているが、これは親でも、第三者の教育者でもどちらでも当てはめていただいて良い。

<3>LGBTの問題、視点については当記事ではカバーしきれないので、ひとまず子ども当人と異性を対象とした視点を基本とし、文中では“異性”“異性等”と二種類の表記があることをご留意いただきたい。

 

――全体の流れ――

①乳幼児期の愛着形成、自己肯定感

②人間の体の機能の理解

③体と心の変化を肯定する

④相手を大切にする関わり方の理解

⑤現実社会で起きていることを知る

⑥実践的な場面に基づいた性を話し合う

 

①乳幼児期の愛着形成、自己肯定感

 子育て経験のある人ならわかると思うが、自分の子どもから「ボクはどこから生まれてきたの?」などと聞かれたことはないだろうか。あるいは、男の子が、女の子のことを指して「ボクにはオチンチンがあるのに何で女の子にはないの?」などと聞かれたことはないだろうか。(この逆のパターンも有り)

 乳幼児期のこれらの言葉と、養育者とのやり取りは、発達において非常に大切な役割を果たしている。自分自身がどこから来て、どういう存在で、これからどうやって生きていけばいいのかを子どもなりに模索、確立しようとしている段階だ。この時期には、子どもの言葉に耳を傾け、無下に否定するようなことを言わなければ大丈夫である。子どもの理解力は、大人が思っている以上に高い。

②人間の体の機能の理解

 この部分は、現状の小中学校の教育の保健体育などで学ぶことができる。手足、内臓、脳などの各部位の機能を学ぶのを基本にすればよいのだが、重要なのは、生殖器の機能の伝え方だ。排泄だけでなく、性行為に使われる部位であることも正直に子どもに伝える必要がある。具体的な性行為の方法まではまだ知る必要はなく、自分の体の部位の役割を知った上で、「ではどうしたら良いんだろう」と、次の学びに繋げることが大切だ。

 同時にこの時期には、プライベートゾーンを守る知識も子どもに伝えることも必要である。これについては既存の性教育でも概ねカバーしている。プライベートゾーンとは、口、胸、下半身(生殖器、お尻)のことで、それらを自分で大切にして、人に見せたり触らせたりしてはいけないことを学ぶ。

 なお、精通、生理、妊娠のメカニズムも、この段階で学ぶのが望ましいが、あまり難しい所まで深く学ぶ必要はない。ざっくり概要だけ理解できれば、後のより実践的な学習段階で深い所まで学ぶ機会がある。この段階で大切なのは、あくまでも体の機能を理解することだ。

③体と心の変化を肯定する

 この項目は、思春期前には特に重要だ。

 人間は一定の年齢になれば、性欲が芽生えて異性等の体に興味を持ち、自分の体の変化にも気づくようになる。このことを、教育者は「人間誰しもそれが自然であり、それで良いんだよ」と肯定することで、子どもは次の一歩に進めるようになる。この時点で、「個人差」という言葉を、子どもには充分理解させることが大切だ。

 体の成長も性欲の増進度も子どもそれぞれに違うし、子どもは、他者と自分を比較してしまうことが常だ。例えば女性なら、10代の頃に自分の胸の大きさを周りの子と比べて「何で自分はまだ小さいんだろう」などと悩んだ経験のある人は多いだろう。そこで、教育者の言葉がカギになる。自分の体と心の変化を、自分のペースで受け止めて良いことを知るのがこの段階だ。

 とはいえ、思春期頃は、ある程度は自分を受け入れきれずに葛藤しながら20代に入っていくのが自然である。完全に肯定できないからと心配になる必要はない。

④相手を大切にする関わり方の理解

 ①~③までは、自分を知り、自分と向き合うことがテーマだったが、ここからは、それを元に“相手と向き合う”ことがテーマになる。端的にいえば、自分を大切にした上で、相手を大切にするということをディスカッションも交えながら学ぶことが望ましい。

 性や、異性との関わりは、相手と向き合い、二人で作り上げていくものなので、会話する、一緒に遊ぶ、デート、キスなど、具体的な場面を想定しながら、教育者と子どもでディスカッションすることが大切になる。(ただし、性行為そのものを話し合うのはこの段階ではまだ早い)

 この段階で、子どもに伝えたい重要な考え方が二つある。

・人間の相互理解には時間がかかるということ

・自分の気持ち、欲望だけを押し通さないこと

 これは、異性との恋愛や性行為に限らず、全ての人間関係構築において大切なことだ。特に、男性と女性は、全く違う生き物に見えるかのように特徴が異なるので、相互理解に時間がかかるのが当然だ。ディスカッションを通じて何度も子どもに伝えていきたい。

 さらにこの段階で重要な知識として、二点学ぶ必要がある。性感染症避妊についてだ。この内容は現状の教育でカバーはされている。この二点はどちらも、この項目の“相手を大切にする関わり”という視点で伝えることが重要だ。

⑤現実社会で起きていることを知る

 ここまで来たら、だいぶゴールが近い。④の項目まででは、自分の体を理解し、相手と関係を築く際の大切さを理解した。最後には実際にどうやって異性と関わればよいかを学んで終わり、と行きたい所なのだが、その前に大切なことがもう一つ残っている。それは、現実社会で起こっている性の事情を知ることである。

 子どもが成長して大人になって生活する場、異性等と出会う場所はどこか?答えは簡単である。今生きている現実の世界だ。ゲームやドラマの世界ではない。もちろん趣向の一つとしてゲームやドラマなどを楽しむのは良いのだが、性についてはどうしても、大人でも子どもでも、自分だけの狭い視点に陥りがちになる。そして、正しい状況を知っていないと、性に関することは、体も心も傷つける不幸な出来事に遭遇する可能性もあるのだ。教育する大人は、そのことを充分に理解していなければならない。

 

 現実に起こっていることを知る上で、特に伝えるべき大切なことは以下になる。

・ゲーム、ドラマ、アニメ、映画などの創作物の性描写は、視聴者(読者)を喜ばせるために制作しているものであって、現実の異性と関わった時には違いを感じるものであること。

・アダルトビデオなどの性ポルノは、視聴者が喜び、性欲を掻き立てるように制作しているものであり、現実の異性と関わった時には違いを感じるものであること。特に男性は、性ポルノの描写がそのまま現実の女性に当てはまると考えず、目の前の異性とコミュニケーションを取ることを大切にすること。

・現代は、インターネットを中心として、性に関する情報は数多く出回っていること。

・世の中には、強制わいせつ、痴漢、セクハラなどの性犯罪があり、男女共その被害に遭う可能性があり、身を守ることが大切であること。

・日本には人身売買はないが、売春、パパ活、托卵といったことが平然と行われていること。

・10~20代の頃の恋愛市場は、著しく女性有利であること。

・現代は結婚したがらない人が増え、少子高齢化になっていること。

 

 なお、今の日本は女尊男卑社会になっているのは多くの人がご存じだと思うが、これについては子どもに説明するのが難しいケースもあるだろう。ただし、目を背けてはならない現実的な問題なので、子どもの成長度や、教育者との信頼関係、教育者の知恵によって、できる話から伝えていくことも必要だろう。

⑥実践的な場面に基づいた性を話し合う

 ようやく、これでラストである。性教育において、最後に何を学べばよいだろうか。これは至って簡単である。

 「待望の恋人ができました。セックスをすることになりました。では、どんな場面で、どうやってセックスをすればよいか、どんな状況が想定できるか」

 これについて考え、話し合うことである。

 実は今の日本の性教育は、この観点が致命的に抜け落ちているのである。現実の場面を抜きにして教育を行うのは、ドライブで出かけるのに、車だけを用意してガソリンを入れないのと一緒である。

 なぜこの内容が抜けているのかというと、実は“はどめ規定”と呼ばれる学習指導要領の内容が関係している。日本の中学の学習指導要領では『妊娠の過程は取り扱わない』とされており、これによって具体的なセックスの場面の学習内容が省かれている。これは、日本の教育の“表面だけきれいにしておけば良い”という風潮そのものといえるだろう。

 日本の性教育の問題が少なく、多くの男女が幸せな性生活を送れていれば良いが、現状はそうではないので、実績を伴っていない方法は改善が必要というごく当たり前な視点が必要になる。

 話を戻すが、この記事内容のここまでの過程を経ていれば、子どもはもう大人の一歩手前で、自分なりに意思表示と言語化ができるはずだ。この最終段階では、教育者自身も恰好をつけず、素直に自分の考えと経験を述べながら、具体的なセックスの場面について子どもと対等にディスカッションをすることが大切だ。異性にどのように声をかけるか、お互い何に配慮するか、避妊具の付け方など、話し合うことは山ほどある。

 そして、この話し合いはたいてい、これという結論が出ずに終わる。それが自然だ。男女の話は人間の永遠のテーマなのだから、少数個人のディスカッションで答えが出るはずがない。

 ただ、それで良いのだ。性教育という過程を通して、一人の子どもが大人として、異性を大切にできる大人になれればそれで目標は達成だ。あとは本人が生きながら学んでいくしかない。

 

 以上になる。読者のみんなの立場は様々だと思うが、子育て中の人だけに限らず、何らかの参考になれば幸いである。

(作・イキルちえ)

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