さて、みんなはマッチングアプリで「会うのは仲良くなってからにしたい」と言われたことはあるだろうか?カンの良い男性の読者だと、すぐにお気づきかもしれない。そう、これはマッチングアプリなどで女性が男性と直接会う前に使う常套文句である。この言葉は、男性のやる気を削ぎ、恋愛の成就に至るまでのハードルを異様に高くするものである。
女性が使うこの言葉には、主に二つの意味がある。一つは、「相手男性が危険がなく安心して会える人かどうかを見極めるために一定の時間を設ける」というもの。これは女性側としては当然の防衛本能なので理解できる。もう一つの理由は、「できるだけ高スペックで自分好みの相手とだけ会うための時間稼ぎ」である。その他細かい理由はあるにせよ、本質的にはこの二つに絞られる。
男性より体力的に劣る女性にとって安全が大事なのは言うまでもなく、これは本来、初回は昼間に会ったり人通りの多い場所で待ち合わせるなどの、他の手段で対応するのが望ましいと言える。その上で、他の部分について述べる。
「会うのは仲良くなってから」
この言葉をよく見てほしい。問題なのは、「どんな状態が仲良くなっているものか」「仲良くなるに至るまでの期間はどれ位か」この二つが全く見えない。つまり、ゴールの見えない洞窟に潜るのと一緒である。異性に対して「会うのは仲良くなってからにしたい」と言っている人、まずは自分がゴールの見えない洞窟に進んで潜りたいと思うかをよーく考えよ。そして、「仲良くなれました、会いましょう」という基準と到達点は、女性側が握っているのである。こういう構図におかしいと気づき、一つ工夫するアプローチをしようとする人は、賢い人だ。この構図は男女平等ではないし、出会いを求める男女の恋愛の手助けになり得るものではない。
人間の心理として、先が見えない状況というのは、不安を感じるものである。例えばあなたが、地震で被災したとする。「もうすぐ助けが来ますよ」と言われたとする。次の日も、また次の日もずーっと、「もうすぐ助けが来ますよ」と言われたとする。「もうすぐっていつだよ!」と、あなたは怒りの声をあげるだろう。
そして、初対面の人同士が仲良くなるために、人間が初対面で相手のどんな部分を見ているかも整理しておこう。かの有名なメラビアンの法則では「視覚情報」が55%(主に顔)、「聴覚情報」が38%、「話の内容」が7%と言われている。判断時間は約3秒で、約90%が直接対面しなければわからない情報なのだ。さらに、人それぞれが持っている雰囲気も、お互い仲良くなるために非常に重要な要素と言われており、これも直接対面しなければわからない。
つまり、マッチングアプリで直接会う前にメッセージであーだこーだやり取りしても、実はほとんどムダであり、相手のことなんかわかりはしないのである。メッセージのやり取りでは良い感じだったのに、実際会ってみたら全然印象と違ったなんてのは、あって当たり前である。
しかし、マッチングアプリをはじめ、現代のコミュニケーションのスタイルを考えれば、これは逃れられない運命かもしれない。男女共安全に会うことができて、対面で話ができるまでスムーズな支援をするマッチングアプリを開発する人がいたら、大ヒットかつ男女の出会いの促進に繋がるかもしれない。
(作・イキルちえ)
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