生きる知恵

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無意識に子どもに言ってしまうことに注意(性教育の話)

 さて、みんなは自分が発している言葉にどれ位意識を傾けているだろうか。発している言葉を含め、人間の普段の行動は、ほとんど“無意識”のうちに行われている。無意識の概念を確立させたのは、精神科医及び心理学者のフロイトである。そして、人間の行動の97%は無意識によるものだといわれている。つまり自分自身でコントロールできている行動は3%程度ということだ。

 そこで今日の記事の内容は、ごく基本的な性教育の話である。簡単なエピソードを用いて、子どもと接する時の性に関わる注意点を解説する。わりとありふれた話ではあるのだが、かなり多くの人が無意識にやってしまっていることが多い話でもある。しかし人間は3%は意識的に自分の発する言葉に注意を傾けて行動ができるので、それを知っていれば実践はそう難しくはないともいえる。それではスタートだ。

 

エピソード①

 母A子(30代)は、9歳の男の子と6歳の女の子がいる。ある日家でくつろいでいると、宅配業者が荷物を届けに来た。下着(ブラジャー)を付けていないくつろいだ格好をしていたのだが、上着も羽織らずにそのまま玄関まで荷物を受け取りに出てしまった。その際、宅配員(男性)の視線が胸の所に釘付けになったのを感じ取った。「ママ~、なんの荷物?」子ども達が階段をバタバタと降りて駆け寄ってくる。その時、A子は思わず子ども達にこんなことを言った。

「おばあちゃんが食べ物送ってきてくれたみたいよ。それにしてもやーね。今シャツだけで玄関出ちゃったんだけど、宅配の人胸の所ジロジロ見てきたのよ」

 子ども達2人はなんのことかわからずポカーンとしたが、すぐに届いた荷物の食べ物に興味を示してはしゃぎ始めた。

 

エピソード②

 いつも一緒に遊んでいる仲良しの子ども5人と、その子達の母親5人が、大きな公園で遊んでいた。いつも通り楽しそうに遊具で仲良く遊んでいる。その時、子どもの一人(B子8歳)が、すべり台などで遊んでいる時に、度々下着(パンツ)が丸見えの状態になっていた。そのことに気付いた母の一人(B子の母ではない)が、無意識にこんなことを口にした。

「まあB子ちゃん、パンツ見えてるけどサービスしてるのかしらね」

 

 このエピソードを読んで読者のみんなはどう思っただろうか。

 結論から言うと、このエピソード二つの、大人が子どもに対して口にしている言葉は問題と言わざるを得ない。とはいえ、子どもの心の傷になるほどという大げさなものでもなく、大人の心がけ一つで充分修正ができるものだ。似たような経験をして大人になっている人も多数いることと思う。

 エピソード①では、母親がブラジャーを付けないシャツ1枚の状態で人前に出てしまったことで、不快な思いをしたことを子どもの前で口にしている。エピソード②では、大人の女性が、8歳の女の子のパンツが見えている状態を指して「サービスしている」という言い方の表現をしている。

 この二つの共通の問題点としては、『大人視点の性の価値観で、子どもに言葉を発している』ということになる。この言動は、性教育の観点では望ましくない。性教育には適切な順序というものがあり、初期の大事な過程をすっ飛ばして早期に大人の視点の性の知識だけを取り入れてしまうのは、一歩間違えるといびつな性の価値観を植え付けることになってしまう。そういう間違った性教育・性情報の影響を受けて大人になってしまう人はたくさんいるのだ。

 性教育の適切な過程とは、この場では簡単に説明するが以下になる。

①乳幼児期の愛着形成、自己肯定感

②人間の体の機能の理解

③体と心の変化を肯定する

④相手を大切にする関わり方の理解

⑤現実社会で起きていることを知る

⑥実践的な場面に基づいた性を話し合う

(この内容については当ブログの別記事で詳細に解説しているので、以下のリンクから参考にしてほしい)

関連記事→<適切な内容の性教育とは>

 

 上記エピソードの視点は、性的興奮につながる体の部位(胸など)、下着を見せる行為がエロやセックスに繋がるという価値観に基づいているため、これらはあくまでも『実践的な場面に基づいた性』の話である。子どもにとって初期に重要な「乳幼児期の愛着形成、人間の体の機能の理解」などがまだ成されていないまま、大人の価値観で子どもに性を伝えてはならないのである。

 別の例えでもう少しわかりやすく言うと、

・13歳の男の子に「こうやってセックスしてるんだよ」などと言ってポルノを見せる

・12歳の女の子に「かわいい下着履いておかなきゃ、男の子に見られた時に喜んでもらえないもんね」

などと言ったりすること、これらは完全にアウトである。

 上記エピソード①②の正答としては、①は、9歳と6歳の子どもに特別何も言う必要はなかっただろうし、②では、「サービスしている」という言葉は使わずに、B子に下着が見えないようそっと注意するだけで良かっただろう。

 それでは、普段子どもと接していて、性が関わる場面では、一回でも間違えた接し方をしたらもう手遅れなのだろうか。(性虐待といえるような極端なひどいものを除く)そんなことはないし、そんなふうに考える必要もない。

 子育てを含めて、実際子どもが育つ過程では、完全に子どもが無害で良いものだけを取り入れ続けて大人になることなどはあり得ない。極端な潔癖、純粋培養ともいえる育ち方は逆に悪影響である。

 例えば男の子は、ふとした時に女の子の下着が見えた瞬間に性に目覚めることなどは多くの人が経験するし、女の子は自分の下着を見られる体験が性に関連することだと知ることも多くの人が経験する。子どもが育つ過程では、世間の風を感じ取りながら、性への興味、関心、体験を積み重ねていくものだ。それが大人になるということでもある。ただしまずは、子ども達に対し適切な性教育を行うことが大前提だ。

 大人(親、教育者含め、全ての大人)が心がけることは、子どもに対して言葉を発する時、少し自分の言葉に意識を傾けて話しかけてあげてほしい。そうすれば、無意識下ではない、意識された3%の素敵な言葉を子どもに伝えてあげられるはずだ。

(作・イキルちえ)

こちらも合わせてどうぞ→<このブログの紹介>

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