生きる知恵

婚活、恋愛、マッチングアプリ、子育て、教育、健康、心理学、人間関係、男女の話、性の話など多彩な内容を、ブログ・コラムとしてイキルちえがお届け。

先が見えないドキドキ感が失われている現代の恋愛

 さて、みんなは今純粋に人を好きになる気持ちを持っているだろうか。今日は、現代ならではの社会状況が、恋愛に及ぼしている心理考察を行う話である。

 人間が異性に恋愛感情を抱き、心が大きく揺れ動くのは一般的には10代~20代の頃が最も大きいものだが、それ以外の年代でも恋愛感情はいつでも起こり得るものだ。そして恋愛感情が沸き起こる際には、その時の本人の健康・心理状態も大きく関与する。

 そして、異性を好きになる時にポイントとなる感情が二つある。

 一つは、「この人とこうなりたい」という“願望”である。「もっと近くにいたい、話したい、デートしたい、セックスしたい」といったものが含まれる。

 もう一つは「この人と恋人関係になったらどうなるのかな」という、未知の領域に対する“不安と好奇心”である。「どんな人なのかな、一緒に出かけたらどんな楽しい気分になるのかな、手を繋いだらどんな感覚かな」といった、その相手とまだ経験していないことに対する気持ちである。

 作家で尼僧(にそう)でもあった故人の瀬戸内寂聴(せとうちじゃくちょう)氏は恋愛に関して様々な名言を残しているが、人を好きになる気持ちについて、「雷に打たれたような感じで、自分ではどうすることもできないもの」と生前にテレビ番組で語っている。要は、恋愛感情というものは、自分でコントロールできるようなものではなく、ある時突然訪れるものだ。

 しかし、現代はその均衡は崩れつつある。

 

<1>願望

 恋愛は相手がいてこその感情なので、必ず相手に対する願望の気持ちがセットになる。例えば、もっと話したいという願望を叶えるためには、好きな人と話す機会を作るために何らかのアクションを起こさなければならない。

 しかし、これがいかに大変なのかは今多くの人が感じているのではないだろうか。職場などだったら人間関係や仕事に支障をきたす可能性もあるし、ハラスメントと捉えられてしまうリスクもある。好きな人にアプローチできたとしても、断られた時の心理的ダメージも怖い。

 「失敗しちゃったけど、切り替えて次行こう!」とすぐ切り替えられればいいが、これはそう簡単な話ではない。今の社会は、失敗に対するリスクがあまりにも大きい。この失敗で仕事の人間関係に支障が出たら、生活に関わる大問題になる。学校生活でも同様だ。

<2>未知の領域に対する“不安と好奇心”

 恋愛で一歩ずつ相手と関係性が深まる過程は、大きな醍醐味でもあり、人間が成長する大切な機会でもある。例えば、手を握った時の感覚は、異性それぞれで全く感情や感覚が違うのは多くの人がわかるのではないだろうか。

 そしてこの次に、「この人とキスをしたらどんな感じなのかな」といった、まだ経験していない未知のことに対して、不安がありつつも好奇心も沸き起こる。そして、どうしたら相手の気持ちを受け止め、関係を深めていけるかを試行錯誤していく。こういう経験の積み重ねは、人間が大きく成長していくものだ。

 ところが、現代はあまりにも多くのことが、事前にわかってしまっているのである。様々な恋愛経験のエピソード、数多くの男女の本音が暴かれているネット情報、そして異性の裸や性行為に関することも、あまりにも簡単にわかってしまう。

 先が見えていることに対しては、人間は意欲を失う側面がある。新鮮味が薄いので、一生懸命打開しようとする気持ちが沸き起こりにくい。その結果、相手と真剣に向き合う気持ちも少なく、希薄な関係になる。

 『恋愛したい、失敗リスクが多い、異性とデートしたい、セックスしたい、男女の考えがたくさんネットでわかる、異性の裸やセックスってこうなんだ・・・』

 これらの状況を踏まえると、人間はどんな気持ちになるだろうか。どんな行動をするだろうか。

『何もしなくなる』

『願望だけが残されて行き場がなくなる』

 今、こんな人は本当に多いと思う。

 

 これは今のところ解決策が存在する話ではない。恋愛は、人それぞれの生き方や生まれながらの環境、外見などにも大きく左右される。

 ただ一つはっきりしているのは、恋愛は誰でもいつでもしてよいものだ。どの人間にも与えられている自由な権利である。そして冒頭で挙げた瀬戸内寂聴氏の言葉のように、雷に打たれるかのような、そんな感情がいつ突然訪れるかはわからない。

 今の世の中は、先行きが明るいとは言えず、一定の年齢になればどんな生涯になるか何となくわかってしまうものだが、人を好きになる気持ちはもっと大切にしていきたいものである。

(作・イキルちえ)

こちらも合わせてどうぞ→<このブログの紹介>