さて、みんなは他人にわかってほしいと思う事情をどれ位抱えているだろうか。今日の記事は、子育ての現場で起こった一つのエピソードを紹介し、「なぜ私の事情に合わせてくれないのか、わかってくれないのか」という気持ちがどんな現象を起こすかを分析していく内容である。よかったら最後まで読んでくれ。
ここはとある小学校のPTAのグループ活動の場。学校の活動とは一線を画す場であり、活動したい子どもと保護者が自主的に登録して集まり、ボーイスカウトのような独自的な活動をしている。10数名の参加者がおり、活動は好評のようだ。
そんなグループをリーダーとして取り仕切る、保護者のA子。ある日のグループ活動後の食事会の場所選定を行っていた。最初は手軽に予約できる近場のファミリーレストランで検討していたが、知人から魚が美味しいと評判の和食店で団体予約ができることを聞いた。下見にも行き、子どもも喜びそうなメニューが豊富で、魚以外のメニューもあり、雰囲気も良い。場所選定はA子に一任されていたため、A子は和食店に団体予約を申し込み、食事会のお店が決まったことをグループのメンバーに連絡した。
ところがその後、ある保護者から抗議の連絡が来た。ある子どもの保護者B子からだ。
「うちの子は魚アレルギーなんですよ!何でそんなお店に決めたんですか?うちの子への配慮が足りないですよね?もうグループ活動は辞めさせますから!!」
A子は事前に、B子の子どもが魚アレルギーだということを聞いていなかった。魚以外のメニューもあること、今進行中の活動から急に抜けられても困ることを説明しても、B子は全く聞く耳を持たず、子どもの声も無視して、一方的にグループ活動から抜けてしまった。
読者のみんなはこのエピソードをどう思うだろうか。いくつかの視点で分析が必要だが、関わる事柄としては以下になる。
まず、食物アレルギーは時として命にかかわる重大な事態を引き起こす。特に子どもの食事の際には、食材チェックは必須になる。(とはいえ、このエピソードの場合は食事会には保護者も同伴なので、子どもだけでレストランに行くことになって、うっかりアレルギーの魚を口にしてしまったという事態はまず起こらないだろう)
現代の子育ては誰にとっても大変なものだ。「うちの子どものことを理解してくれなかった」という気持ちも起こりやすいといえる。B子の事情としては、こういうものが挙げられるだろう。
A子の事情はどうか。A子は確かにグループ活動のリーダーであり、リーダー(責任者)は、メンバー個々の状況を的確に把握した上で意思決定していく責任を担うものだ。
しかしである。この場合のA子は、学校の先生のような公的な責務を担う責任者や会社の役職のようなものとはかなり違う。校外活動の自主的なグループであり、いわば民間のサークル活動のようなものだ。何かを決定した際、修正が必要なことが出てきたら柔軟に変えていけば良いわけであり、過剰な責任をA子に押し付けるのは望ましくないといえるかもしれない。
さらに、生きていれば、いつでも自分の思い通りに物事が進むわけではないことは、大人であれば理解しておく必要がある。
これらの他に、このエピソードから何がわかるだろうか。
B子は「なぜ私の事情に合わせてくれないのか、わかってくれないのか」と憤慨していたが、実は、B子も、その他の大多数の人々も・・・非常にたくさんの選択肢を持ち、恵まれた生活が転がっていることが目に見えてくる。
このグループ活動のように、自主的に参加できる楽しみが地域に存在すること。食事会を開催できるような飲食店が、A子が見つけた和食店、ファミリーレストラン、その他多数存在すること。さらには、結婚して自分の子どもがいること。安心して住める家があること、通える学校があること・・・。
これらの多くは、自分で選ぶことができる。かつてタレントの岡村隆史が、テレビに文句を言う人に対して「嫌なら見るな」と発言して批判され、その結果実際にテレビを見ない人も増加し続けるなんていう出来事も起こったが、「テレビを見るか見ないか」ということも、自分で選んで決めることができる。
B子は、その瞬間「私の事情に合わせてくれない、わかってくれない」という感情だけで物事を判断してしまった。もし、A子から「食事会は和食店に決めました」と聞いた時に、「なぜこう決まったのだろうか」と冷静に考えることができただけで、全く違った未来があったかもしれない。
子どもがグループ活動を続けていくことで、役立つ能力が身に付くかもしれない。将来財産になる人間関係と繋がるかもしれない。このエピソードのようにB子が抗議してグループ活動を辞めさせたことで、子どもが意欲をなくしてしまうかもしれないことだってあり得る。
さらには、親が感情をコントロールできずに振る舞う様子を、子どもが常に間近で見ていたらどんな悪影響があるだろうか。これについては、様々なことが明らかになっている。「子は親の鏡」という言葉があるように、子どもは親のその“感情的な”振る舞いを真似するようになる。不安や恐怖心が増大する等、精神面に悪影響をもたらし、対人関係も不安定になる。
しかし、最も避けたい悪影響を一つ挙げるなら、『大人になったら、感情的に自分勝手な主張をして良いんだ!』と子どもが認識してしまうことだろう。
その瞬間、どう判断してどう行動したかで、一瞬にして未来が変わる場面というものは度々起こる。冷静さを失って、感情のままに行動していると、失うものは大きい。
(作・イキルちえ)
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