生きる知恵

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人の役に立つ仕事をするにはどんなスキルが必要なのか(アナウンサー川口ゆりの炎上騒動から学ぶこと)

 さて、みんなは自分の周囲を客観的に見て生活ができているだろうか。今日の記事は、フリーアナウンサーの川口ゆりがSNSでハラスメント発言を行ったことで炎上騒動となった出来事を元に、社会問題の視点から解説する。こういう騒動は類似のものも過去に起こっており、なおかつ今後も起こり得るものだ。

 まず概要を説明しよう。2024年8月8日、フリーアナウンサーの川口ゆりがツイッター(現X)にて、以下のような投稿を行った。

『ご事情あるなら本当にごめんなさいなんだけど、夏場の男性の匂いや不摂生してる方特有の体臭が苦手すぎる。常に清潔な状態でいたいので1日数回シャワー、汗拭きシート、制汗剤においては一年中使うのだけど、多くの男性がそれくらいであってほしい…』

 この投稿は瞬く間に炎上し、本人は謝罪のツイートを投稿するも批判・炎上は収まらず、上記投稿は本人が削除。所属していた事務所からも解雇されることになった。批判内容の意見としては、「男性だけに匂いの指摘をするのはハラスメント、性差別」「外仕事で働いている人が一日に何回もシャワーを浴びれるわけがない」などのものが相次ぎ、一部には川口ゆりの意見に賛同するものもあった。

 情報は多数あるが、一応以下に、騒動の概要と本人のWikipediaのリンクを掲載しておく。

<参照元:【時系列】川口ゆりの炎上内容を総まとめ!酷評や契約解除はかわいそう!?(芸能人の妻旦那)

<参照元:Wikipedia(川口ゆり)>

(※2024.8.19追記:Wikipediaの項目は、この記事アップ後に削除された模様である)

 この問題は、主に性差別の視点、ハラスメントの視点で多くの意見が巻き起こったが、この記事ではその部分ではなく、違う観点で記述していく。それは、『人の尊厳に関わる仕事の、適任者の考え方』である。以下から三項目に分け、(1)と(2)では、今回の騒動に特に関連する重要な視点を挙げ、(3)で『人の尊厳に関わる仕事の、適任者の考え方』について詳しく解説する。

 

(1)人間は匂いがあるのが当たり前という視点

 現代、特に都市部では、人の密集度が非常に高い。代表的なのは満員電車で、その他飲食店などでも人の匂いが気になることは誰しもあることだろう。外出する際には、エチケットとして、人に不快な思いをさせないよう配慮することは大切なことである。

 しかし、もっと根源的なことを忘れてはならない。人間が生物である以上、匂いがあるのは当たり前のことだ。日本は特に諸外国と比べて匂いに対しては過剰な程に敏感であることもよく知られている。

(2)想像力の欠如

 SNSは特に「発言は慎重に」とよく言われるが、これはSNSに限らず一般の生活時でも同様である。

 能力の高い人とは、「何をどうしたらどうなるかという、予測・想像力が豊か」である。能力の低い人は、そういう予測力や想像力が低い。自分の発言や行動でトラブルを招く人というのは、程度の差がありながら、どこにでもいるものである。今回の川口ゆりの騒動でいえば、ツイッターに投稿する前にどんなことを想像しておく必要があっただろうか。例としては以下になる。

・「男性の匂いが苦手という発言をツイッターでするのは適切かな」

・「男性だけを指摘する内容は間違っていないかな」

・「匂いは誰にでもあるという視点を忘れていないかな」

・「一日何回もシャワーを浴びるということは現実とかけ離れていないかな」

・「匂いがある人にはどんな事情があるんだろう」(外での労働による発汗、治療が必要な体臭、口臭等)

(3)その経歴は、その仕事に適切だったのか?

 今回の騒動は、川口ゆりの経歴が大きなカギとなっている。女子短大を卒業後、10代後半の時からミスコンなどに出場し、20代からは旅行代理店とIT企業に勤務。フリーアナウンサーとして事務所に所属しながら、ハラスメント防止研修の講師業も行っていたという。

 ここで、もっと深く、よく考えるべきことがある。

 講師業のように、表舞台で人に教えを説くことは、想像以上に広い視野と責任が必要だ。現代は、どういう社会構造で、どんな人が社会を支えているのか。なぜ「私自身」は匂いが気になるのか。なぜ世の中では匂いに関するトラブルがよく起こるのか。匂い以外に世の人が対立する時はどんな原因があるのか・・・。

 そして、ハラスメントとは・・・種類は多数あるが、一言で言えば『他者に苦痛を与える行為』である。人が健康に生きる上で、“苦痛”は大きな障害になる。それを取り除き、人々が生きやすい社会を作る上では、様々な境遇に置かれながらも一生懸命生きている人達の存在を理解し、包括的な視点を持っていなければならない。

 しかし今回の川口ゆりの発言は、その包括的な視点が全くなかった。

『10代後半の時からミスコンなどに出場し、20代からは旅行代理店とIT企業に勤務・・・』

 人間の能力は、経歴として記される部分だけで判断できるものではないが、エアコンの効いた涼しくきれいな部屋で、見た目がきれいな仕事しかやってこなかった類による“経験不足、視野の狭さ”を露呈したのが、今回の騒動だと仮定できる。本当に視野が広くて、多種多様な生き方をしている人が社会を支えていることを理解している人であれば、特定の性別(男性)だけに対して匂いを指摘しようなどという発想にはまず至らないからだ。

 そしてこの問題は、川口ゆり本人の問題というよりも、「ハラスメント防止研修講師」「アナウンサー」のような、人権問題や、多様な人の生き様を伝える重要な仕事を担う人の「選び方、適正」という問題ではないかとオレは思う。

 再度、川口ゆりの経歴の部分を見てみよう。

『10代後半の時からミスコンなどに出場し、20代からは旅行代理店とIT企業に勤務・・・』

 こんな類の経歴の人の多数は、包括的な視点を持ち得ているだろうか・・・?おそらく、そういう視点を持っている人は少ない。家庭環境とお金と元々の素質と良い外見にかなり恵まれていなければ、こういう経歴を歩むことは考えにくい。恵まれすぎた環境で生きると、「他人の痛みを理解できなくなる」罠にかかる可能性が誰でもあるのだ。川口ゆりと似たような経歴の人が同じ職務に就いていたら、同様の騒動を起こしていた可能性もあるのではないかと思う。

 仕事に対する適任者のミスマッチという側面もあるのだが、それだけではなく、“これからの社会で重要な役割を果たす仕事をする時には、どんな能力が必要なのか”ということを考え直す時期に来ているといえる。

 例を挙げてみよう。

『幼少期に虐待を受けた経験がある。児童養護施設を18歳で卒所。アルバイトをしながら専門学校に通い、社会福祉士の資格を取得。その後一般企業で働きながら、人権に関するNPO団体で活動する』

 こういう経歴の人は、他者に苦痛を与える行為を防止するためのハラスメント防止研修や、言葉の専門家としてメディアを通して発信する者として、最適なスキルを持っているという考え方もできる。この経歴を見ただけで、多種多様な生き方を経験して視野を広げ、「モラル、人権、ハラスメント、差別防止」などに関わる包括的な視点を持っている人という想像は非常にしやすい。

 家庭環境とお金と元々の素質と良い外見に恵まれて、すんなり大学に行ってミスコンに出場し、大手の企業に就職して働いている人と、上記例の被虐待や児童養護施設などを経験している人を比べて、どちらがハラスメント防止研修講師やアナウンサーにふさわしいのかという価値観を、社会が試されているといえる。

 他の例として、一昔前、役所や教育関係で働く人は、学歴だけは立派だけど庶民の立場に立って物事を考えたりすることができず、視野が狭いという指摘はよくあった。(今でもある)しかし、場所によっては少しずつそういう風潮も変わっており、多様なキャリアを積む人も現場で増えつつある。

 

 まとめに入る前に、少しだけ付け加える。

 この記事執筆は2024年8月15日で、騒動が始まってまだ一週間あまりなので、この騒動がこれからどうなるのかはまだわからない。ただ、必要以上に口汚い言葉で川口ゆりを責め立てるのはすべきではないと思う。今回の騒動は男性差別やハラスメントに直結する話なので、この騒動の背景にある事情や、怒る(主に)男性の気持ちもよくわかる。でも、冷静さは忘れないでほしい。

 “視野を広げる”“相手の立場に立って物事を考える”とはいっても、人間は元々そんなに賢い生き物ではなく、それには限界があるからだ。どんなに深く広く学んでも、生きていれば、「知らない、わからない」ことにぶち当たるのが人間なのだ。せっかくのご縁で巡り会った当ブログの読者のみんなには、そういう一面も是非知っておいてほしい。

 これからの世の中は、『モラル、人権、ハラスメント防止、差別防止』こういう価値観はより重要になっていく。そして、人間の尊厳に関わる仕事は、“相手の立場に立って物事を考える能力”は必須だ。一見きれいで立派な肩書を持っているというだけで良しとされ、優遇されるような社会は変わりつつある。

 人間の尊厳に関わる仕事というものは、ハラスメント防止研修講師やアナウンサー以外にも、たくさんある。何の仕事に、どんな人が適任で、どういう人材を育てる必要があるのか、オレ達人間は問われている時期に来ている。

(作・イキルちえ)

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