さて、みんなは子どもの時に一人で遠い所に出かけるのに憧れることはあっただろうか。今日の話は、タイトルの“子どもを性犯罪から守る方法” ということに加えて、やや幅の広い話になる。子育ての際には、“ここを軸にして考えよう”という帰結を確認できるものとしてまとめている。やや長い記事だが、是非最後まで読んでほしい。
次世代の子どもを育て、支えることは、大人の大切な役割だ。当事者の親だけでなく、自分の子どもではない時の第三者としてもだ。
話を進めるにあたって一つあるニュースを紹介したいのだが、これはもう10年以上前のもので、ソースが何もなく詳細がわからない。そして、報道されていないだけで、おそらく類似のニュースや事件は多数あると思われる。当時民放のテレビで報道されていたのは確かなので、オレの記憶を頼りに記載しようと思う。内容は以下だ。
ある日、女子中学生二人組の姉妹が、二人だけで東京の新宿(もしくは渋谷か、違う場所かもしれない)に遊びに行った。しかしその最中、ある男性に声をかけられ、いたずらをされた。この出来事に対して母親がインタビューに応じており、『まさかうちの子がこういう目に遭うなんて。この日のことを思い返すと体が震えてくる』と話していた。
これを読んで、読者のみんなはどう思っただろうか。人により様々な意見があると思う。
一つ意見の例を挙げるなら、「未成年の女の子だけで都心に遊びに行かせるのは危ない。最初から行かせなければよかったじゃないか」というものはあると思う。これは一理あると思うし、子ども本人が「一人で都心に行きたい」と言い出したら、何の対策もなく簡単に行かせるべきではないとオレも思う。
しかし、そう簡単な話ではない側面もある。年頃に入った子どもを持つ親なら多くの人が経験しているが、中学生位の年齢になれば、親の手を離れて一人で外の様々な場所に行きたがるのは発達上自然な流れである。
子『一人で行きたい!〇〇ちゃんと一緒に行きたい!』
親『危ないからダメ!』
こういうやり取りは、多数の親が経験しているだろう。
さらにもう一つエピソードを紹介する。これはニュースではなく、オレの身近な実例だ。
とある場所に住む11歳と9歳の男の子二人組の兄弟。二人は夏休みに、電車を乗り継いで約10時間、二人だけで親戚の住む土地に遊びに行った。2泊3日である。電車を乗りこなし、二人は無事に帰宅。夏休みが終わって、二人はクラスでその出来事を話すと、「行動力もあるし自立もしててすごいね」と、クラスメイトや担任教師に賞賛された。
これを読んで、読者のみんなはどう思っただろうか。さらに、先ほどの女子中学生二人組のニュースと比較してみて、どう感じるだろうか。この事例二つを比較してみると、いくつかのポイントが浮かび上がってくる。以下に箇条書きで挙げてみよう。
・未成年だけで遠出するのは、女の子の方が危険は大きい。
・男の子は良くて、女の子はダメというのは性差別にあたる。
・子どもを安全に養育するのは、親の基本的な義務。
・基本的に、子どもはいつか親元を離れるもの。外出して自分で物事を切り開く経験をさせないのは過保護であり教育不備。
・都心部よりも地方の方がまだ安全といえる。(ただしこれを100%と考えてはいけない。地方でも犯罪者はいるものだし、事件というのは、思いもよらないような場所で起こったりするのは日常だ。また、地方に行く場合も、乗り継ぎで都心部を経由してから行くことも多々ある)
・新宿、渋谷といった繁華街は、昼間ならまだしも、夜は大人でも危ない目に遭う場合もある。親は、どういう場所が安全か危険かを知っておく必要がある。
子育ては、ヒヤヒヤすることの連続でもある。例えば、遊具から落ちて危うく大怪我になる所だったなんてのは、多くの子どもが一度は経験する。そして、多少無茶なこともありながら経験を積んで、大人に育っていくものだ。これは大切な視点だ。
ただし、これは特に強調しておくが、子どもの発達、人生に致命傷になってしまうような出来事からは、必ず守らなくてはならない。性犯罪は特にだ。
子『一人で行きたい!〇〇ちゃんと一緒に行きたい!』
親『危ないからダメ!』
子どもとこういう言い合いになったら、まずは、熱く(しかし冷静に)子どもにこう伝えてみよう。
『世の中生きていれば、自分ではどうにもできない出来事に遭遇することが必ずあるんだよ。まずはそういうものから守ることが一番大切なんだ』
その上で、
『これから自分で様々な場所に出かけられるよう一緒に考え、準備しよう』
こういう二段階で言葉を伝えることだ。
(親子で収集がつかないケンカになる場合はたいてい、親が感情だけで言葉を発していて、子どもの意志を即否定していることが多い)
一回で子どもが納得しないことも多いが、何回かに分けて辛抱強く冷静に伝えていけば子どもは必ず理解できる。
では、性犯罪被害の防止、子どもの自立を男女平等に考え、未成年の子どもだけの遠出をどう考えたらよいだろうか。
これは、段階を経て子どもの行動力を育てることを幼少期から行っていくことに尽きる。要は、赤ちゃんの頃から基本としてやっていることと考え方は同じだ。
まずは親と一緒に、少しずつ出かける距離を伸ばし、安全な歩き方、バスや電車の乗り方などを覚え、自分でできることを増やしていく。そして、出かける場所の選択、場所の安全性の判断は、出かける前に親と一緒に確認できるので、その作業は親子でやるのが望ましいだろう。そして、子ども本人が、一人(または友人等と一緒に)で遠出できる位の一定の能力が身に付いたと判断できたら、積極的に外出させて問題ない。その判断に、男女の区別はしてはならない。あくまでも、本人の能力を焦点に判断することが大切だ。
以前オレが会った海外旅行が趣味の、娘を持つお父さんは、このような方法を取っていた。娘と一緒に海外に行って、娘を先頭にして一人で歩かせ、自分は10m位後ろから付いていく。そして、多少のトラブルに遭う位のことは(買い物でぼったくられる等)手を出さず見守る。ただし本当に危険な目に遭いそうな状況の際は即座に側に行くようにするという方法だ。これは有用な参考例である。
まとめに向けて、いくつか補足しておこう。
犯罪被害などの危険から身を守る基本的な行動は、“最初から行かない”“逃げる(助けを求める)”この二択である。
そして、誰に助けを求めればよいかも子どもに教えておく必要がある。逃げ場所として大体どこにでもあって主要推奨するのは、「交番」「コンビニ」この二点である。助けを求める相手で主要推奨するのは、「警察官等の公式な制服を着ている人」である。
また、身を守るための護身術、防犯ブザーなどの防犯グッズもあるが、そういう類のものは、あってもムダではないが、「護身を習って防犯ブザーもあるから大丈夫」と考えるのは危険でしかない。
なぜか。それは使いこなす本人の能力次第であり、犯罪者側も防犯グッズなどの存在と対策方法を知っているからである。そもそも考えてみてほしい。
「小学生が誘拐されそうになったが、護身術で誘拐犯を倒して身を守った」
「女の子が危ない場所に連れ込まれそうになったが、防犯グッズで相手を撃退して身を守った」
こんな事例をみんなは聞いたことがあるだろうか。くまなく調べればあるのかもしれないが、ほとんどの人は聞いたことがないと思う。活用された事例がないということは、護身術や防犯グッズは実質役に立っていないという証明にもなる。子どもにそういう自主的な防犯対策行動だけで身を守らせるのは無茶でしかないのは、ある程度物事を知っている人ならわかると思う。
最後に、性犯罪から身を守るのに特に大切な“普段の動作”を二つ挙げておく。それは「周囲をよく見て毅然として歩く」「歩きスマホ絶対禁止」である。これは特に、親が子どもを育てる際、意識して身に付けさせたいことだ。
そもそも人間には、身に危険が近づいていることを本能的に察知する能力がある。(現代人はこういう能力が衰えてきていることも指摘されている)周囲をよく見て毅然と歩けば、危険な目に遭う可能性は確実に減らせる。歩きスマホはもう問題外で、犯罪者に対して自ら隙を見せるアピールをしているのと同じだ。交通事故に遭う危険もあるので、絶対にさせないことだ。
長くなったが以上である。今回は子どもを持つ親向けの内容ではあるが、危険から身を守り、そのための準備という意味では、全ての人にとっても生きる知恵として大切な内容だ。読者のみんなの安全な生活に役立てば幸いである。
(作・イキルちえ)
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